プレゼントというものはその人の好みがある上、値段との相談もあって品定めはなかなかむつかしく、あれこれ迷ったあげく疲れも手伝って二人の選択は結局、皮ベルトというところに落ちついたのである。
彼女はまた取り寄せ魔で、何か珍しいものがあるとすぐに取り寄せたがる癖があり、この時も「以前に滋賀県の親戚からもらったお菓子がおいしかったから三つばかり取り寄せました」といって、祐介の目の前に並べられた四角い箱は、縦に赤とグリーンのツートンカラーでくっきりと色分けされた、目にも鮮やかな外装で、その中身は千代結びであった。
同窓会の当日が来ると、彼女はいそいそとベルトの入った箱を奥から持って来たが、
「このお菓子もさしあげるの」といってくだんの千代結びの箱を一つ持って来た。
『うーん少々あげ過ぎじゃないの』と祐介は言いたいところだったが、折角あげようと言っているのに水をさすのも悪いかなと思いつつ
「うーん喜ぶだろうがなー」と、『がなー』を入れてあとをにごした。
「でも先生には随分お世話になったからわたくし、この位はさしあげたいの」と、そう言って彼女は明日の準備に余念がなかった。
帰宅後の第一声は、同窓会は大盛会でお別れの際、先生にプレゼントをさしあげたらとても喜んでくださいました、と、彼女の弾んだ声の報告であった。
A薬局長の奥さんから電話が掛かって来たのはその翌日のことで、つまり二人がリラックスしてテレビを観たり会話を楽しんでいた最中の電話が、それであった。そして、終わったあと志保が夫に詳しく解説した会話のやり取りは、次のようであった。
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